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温もりを抱きしめて (1)

 漫画『ガラスの仮面』の二次小説

【注】
 オリキャラでてきます。
 オリキャラとマヤの絡みはありますが、基本的にはマス×マヤのハッピーエンド。
 



「北島さん、藤咲涼さんと交際されているというのは本当ですか?」
朝9時、仕度を済ませてマンションの玄関ホールを出た瞬間、マヤはいきなりマイクを突きつけられた。



温もりを抱きしめて  (1) 



「行くな。もうあいつのところには行くな」
張り詰めた声はどこか怒りを含んでいる。
マヤの目の前には、長身で整った顔立ちの青年が立っている。
緩やかなウエーブのかかった少し長めの亜麻色の髪が、耳の後ろから顎先へと流れ落ちる。
そこから甘い色香を放ち、ただ一点を見据える眼差しは、見る者を惑わすような魅力を放っている。
引き寄せられるような引力を肌で感じながら、マヤはその場に毅然と立ち続ける。
「そこをどいて。あなたには関係のないことでしょ」
「……そうかもしれない。だけど、俺はもうこれ以上おまえの傷つく姿は見たくない。あいつには奥さんも子供もいるんだ。いくら待ってもあいつは絶対に離婚なんかしない」
睨み返すマヤは、口調を強める。
「別れて欲しいなんて思ってない。家庭を壊すつもりなんてない。私はただあの人を愛しているだけ。ほんの一時あの人の温もりに触れたいだけなの」
青年がマヤに詰め寄る。
「そうやってこれから先もずっとあいつが呼んでくれるのを待ち続けるのか?」
「ええそうよ。例え、会ってもらえなくなったとしても、私はこれから先もずっとあの人を思い続ける」
決然とした言葉とは裏腹に、溢れる涙が白い頬を伝って流れ落ちる。
互いの服が触れ合うほど距離を縮めた青年は、彼女に触れようと手を伸ばし、けれど触れないままに下ろす。
「酷い女だな。俺の気持ち、知ってるくせに」
「ごめんね、昴」
呟くようなマヤの声が、静寂に吸い込まれていく。
次の瞬間離れた場所から声が上がる。
「カット」
監督の声に女優北島マヤと相手役の藤咲涼がホッと安堵の息をつく。



「お疲れ様です」
マヤは行き交う他の共演者やスタッフに挨拶をしながら宛がわれた楽屋へと戻った。
楽屋のテーブルには、一冊の週刊誌が開かれた状態で放置されている。
開かれたページには、『北島マヤ熱愛』の文字が躍る。
記事と一緒に掲載された写真には、抱き合う二人の男女を写している。
遠目からでも、その横顔でマヤと藤咲涼であることは明確だった。
モノクロの写真が掲載されたページを、掴むと音を立てて引き裂いた。
そこへマネージャーの雪村美優がやってきた。
促されたマヤは衣装を着替え、テレビ局を後にした。
雪村の運転する車に乗り込むと、深く息を吐いて頭を抱えた。
ルームミラーで落ち込む姿を確認した雪村が、重い口を開く。
「本社に着く前に確認しておきたいのだけど、藤咲涼とは本当に何もないのね」
「ええ、そうです。本当に何もないんです。藤咲さんに聞いてもらえば分かることです」
伏せた顔を上げてマヤは懸命に抗議する。
雪村の眉根が寄せられる。
「残念だけど、藤咲涼はあなたとの交際を認めているそうよ」
マヤの顔から血の気が引いていく。
「そ、そんな。嘘です。二人きりで会ったこともないんですよ」
縋りつくような瞳に嘘がないことが分かったのか、雪村は捻った肩を戻して前方に目を向けた。
日が沈み、夜の帳が刻々と下りてきている。
辺りが暗くなればなるほど、ネオンが明るさを増す。
車のライトをつけると、雪村は車を発進させて駐車場から車道へと出た。
何も言おうとしないマネージャーに、マヤは不安を募らせる。
「社長は私と藤咲さんが交際していると信じているんですか?」
「それは、マヤちゃん次第だわ。事実確認のための呼び出しなんだから」
数年前に里見茂と交際宣言をしたときのことが頭をよぎる。
芸能界がいかに恐ろしい場所であるのか身に染みている。
だからこそ、慎重に行動していたつもりだった。
迂闊だった自分が腹立たしい。
流れる景色を見つめながら願うことは一つだけだった。



辿り着いた所属事務所のオフィスは、夜空を突き刺すように聳え立ている。
エレベーターで目的の階に下りると、社長室の前まで来る。
扉にノックをして部屋の主に了承を得ると、雪村が扉を開く。
助けを求めるようにマヤが視線を向ければ、困惑の色を浮かべたマネージャーが促すように頷いた。
おずおずとマヤは中へと入る。
閉じ込めるように、背後で扉が閉ざされる。
視線を床に落としながらも、マヤは部屋の奥にある人の気配を全身で感じ取る。
広い室内には、重い空気が漂い息苦しささえ覚える。
顔を上げたくなる反面、今すぐにでも逃げ出したい気持ちにもなった。
「座りたまえ」
既に耳に馴染んだ低い声に、立ち尽くしていたマヤはピクリと敏感に反応する。
それまで平静だった鼓動がドクドクと次第に大きく脈打つ。
腰を落ち着けて話し合う気にはなれず、マヤはその場で口を開く。
「私、藤咲さんとは付き合っていません。
週刊誌に掲載されたのは、私が躓いて倒れそうになったのを藤咲さんが助けてくれたところを撮影されたものなんです。それに写真には写っていませんけど、そのときはスタッフや他の共演者もいたんです」
カチッとライターの火をつける音がする。
窓際にあった気配が部屋の中央へと移動する。
彼が応接セットのソファーへとゆったりと身を沈めた。
マヤは身動き一つせずじっと返答を待つ。
「写真を撮ったのはうちのカメラマンだ」
意外な答えに、無意識に顔を上げて声の主を凝視した。
憂いを含んだ褐色の瞳がマヤを捉える。
速水真澄が改めて言う。
「久しぶりだな、マヤ」
名を呼ばれて、ドクッと鼓動が大きく跳ねた。
彼とまともに顔を合わせたのは、紅天女の試演のとき以来だった。


1年前、紅天女の試演で選ばれたのは、姫川亜弓だった。
惜しくもあと僅かのところでマヤは敗れた。
審査員の間でダブルキャストの話が持ち上がるほどマヤの演技が絶賛されたが、上演権の問題からその話は泡と消えた。
マヤは恩師月影千草の残した言葉によって前を向いた。
「あなたには、あなたの舞台がある。どんな舞台もあなたが演じれば名作となる。
天才とはあなたのことなのです。演じ続けなさい、マヤ」
まるで遺言のように残して、月影千草は梅の里へと戻ってしまった。
試演後、才能を認めた芸能事務所が何社かマヤのもとへとやってきた。
大都芸能からは水城冴子が契約の話を持ってきた。
悩んだ末、マヤは大都芸能と契約を結ぶ。
マヤには、過去に芸能界を追放されるという前科がある。
「二度とご迷惑をかけないようにスキャンダルには気をつけます。
女優として精一杯演じますので、どうか宜しくお願いします」
契約の席に真澄の姿はなく、大都芸能社の副社長と、社長秘書にマヤは宣誓して丁寧にお辞儀をした。
マヤには紅天女の上演権はなかったが、契約内容は文句のつけようもないほど充実したものだった。
オファーに対する選択権はすべてマヤにあり、マヤはその中からやりがいのある舞台やドラマ、映画に出演した。
苦手なバラエティー番組や取材を受ける必要はなかった。
休む間もなくマヤは忙しく働き続けた。
恋愛をする暇などなかったし、むしろ言い寄られてもすぐに断った。
メディアを気にして異性と二人きりになることも避けてきた。
気をつけていたにも関わらず、ドラマの共演者である藤咲とのツーショット写真が撮られてしまった。
撮影の後にスタッフと他の共演者で食事に行った帰りだった。
撮影は始まったばかりで、これから一緒に仕事をしていく仲間として親睦を深める意味合いもあった。
マヤはそれが分からない子供ではなかったし、仕事の延長として渋々付き合ったに過ぎなかった。
酒は殆ど飲んでいなかったが、店を出たとき躓いてしまったのだ。
それを藤咲に助けられた。
シャッター音が聞こえ、振り返ったときには撮影者はカメラを手に素早く立ち去ってしまった。
そのときは、例え週刊誌に取り上げられたとしても、大きな問題にはならないと心のどこかで安易に思っていた。
よもや事務所が自分を利用するなど、夢にも思わぬことだった。


「大都のカメラマンっていうのは、どういうことですか?」
久しぶりに真澄と会ったことで溢れ出てくる感情やそれに伴う記憶を押し殺す。
真澄の再会の台詞を無視して、マヤは必死になった。
そんなマヤを眺めながら、真澄が指先に挟んだ煙草をくわえる。
紫煙を吐き出すと、テーブルに用意されている灰皿で煙草の火を消す。
「君は紅天女の候補になったほどの実力の持ち主だ。
この1年のドラマやCMの出演で全国にその名が浸透してきた頃だ。
そこで、うちの所属俳優である新人の藤咲涼の売り出しと、ドラマの宣伝のために、申し訳ないが君を利用させてもらった。すまない」
マヤは愕然としてすぐには何も言えなかった。
やがて、俯くと諦めたような、感情の失せた声をだす。
「……そうですか、……で私に何をさせたいんですか?
そのためにここへ呼び出したんでしょ?」
「会社としては、しばらくは恋人らしく振舞ってもらいたいのだが、俺はそこまで君に強要するつもりはない」
悔しさにマヤは唇を噛む。
堪えても涙が溢れ、限界を感じて頭を下げる。
「失礼します」
言い放つと同時に踵を返して部屋を飛び出した。


給湯室から飲み物を載せたトレーを手に水城が出てくると、その目の前をマヤが走り抜け、後輩の雪村が追いかけていく。
去っていく二人の背中を目で追うと、開け放たれた社長室の扉を凝視する。
上司の部屋に入ると、真澄はソファーで頭を抱えて思い悩んでいた。
「マヤちゃん、泣いてましたよ」
真澄は何も応えようとはしない。
「今回の藤咲涼の企画案件に許可を出されたときから、こうなることは目に見えていたのではございませんか?」
「ああ、そうだ」
水城が用意したコーヒーを飲むと、真澄は立ち上がった。
一面ガラス張りの窓際へと立つと、足元に広がるイルミネーションの星屑を眺めた。



【NEXT】

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ton 様へ

拍手にコメントをくださりありがとうございます。
更新が遅れがちになってしまい本当に心苦しく思っております。
楽しみにしてくださり、本当に嬉しいです。
続き仕上がりました。
間もなく更新いたします。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
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