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Wikipedia  (11)

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 気づいて目を開けたマヤの目には、青い空と白い雲が映った。
 ぼんやりと狭い空間を眺め、隣でハンドルを握る真澄と目が合った。
 私服姿の彼はすぐに前方に視線を戻してから、声をかけてきた。
 「おはよう。よく眠っていたようだな。気分は悪くないか?」
 「おはようございます。平気です……」
 反射的にそう答えたマヤは、ガラス越しに明るい空を見つめながら記憶を辿る。
 リビングで真澄と食事をしたことまでは思い出せた。確かそのときは夜だったはず。
 既に朝になっていることにマヤは青ざめる。
 泣きそうになりながら、真澄に謝る。
 「ごめんなさい、速水さん。今日結婚式ですよね。
  私のことはいいですから、早く紫織さんのところに行ってあげて下さい」
 「もういいんだ」
 朝日を受けた横顔は清々しい。
 「何言ってるんですか?全然よくありませんよ」
 「君が言ったんだろ?俺に幸せになれって」
 「そうですよ。だから……」
 マヤの言葉を遮り、真澄は言葉を繋げるようにしてはっきりと言う。
 「だから、君を選んだ。俺が長い時をかけて愛し続けてきた人だから」
 マヤの時が停止する。
 かき消されてしまわないように、真澄の言葉を頭の中で録音し再生する。
 それでも信じられずに、否定する。
 「嘘……」
 「嘘じゃない。
  紫の薔薇の人の正体と一緒に、これからもずっと隠し続けるつもりでいた。
  だが君は、俺を見ていた。紫の薔薇の陰に隠れる俺を、見つけてくれた」

 反応のないマヤを横目で確かめると、真澄は運転に集中しつつ話を続ける。
 「君をベッドに連れて行ったときのことだ。
 途中で逃げ出した俺を、君は『紫の薔薇の人』ではなく俺の名を呼んでくれた。
 幻影を重ねて抱かれるのではなく、
 俺だと分かっていて身を委ねようとしてくれたことが、何よりも嬉しかった」

 大胆に振舞っていたことが今更ながらに恥ずかしくなる。
 マヤは穴があったら入りたい心境になった。
 両手で顔を覆い、くぐもった声を出す。
 「もう忘れて下さい。演技のためなんです」
 「無理だ。君に捕らわれた俺の魂はもうどこへも行けはしない。
 君を得るために俺は全てを捨てる」
 マヤは息を呑む。縋るように真澄を説得する。
 「私なんかのために、そんなの絶対ダメです。
 紫織さんを傷つけてまで、速水さんと一緒にいられません」
 「君のためじゃない。
  俺は俺のために、君を浚って逃げるんだ。
 君の同意など初めから求めてはいない。
 現にこうして君を車に乗せて、飛行場へと向かっているしな」
 「え?」
 顔を上げて初めて気づく。
 走っている道路は高速道路で、しかも標識は成田空港行きを掲示している。
 
 真澄が不敵な笑みをマヤに向けた。
 「海外へ高飛びしたいところだが、沖縄あたりで妥協しておくよ。
  どうせ君はパスポートなど持っていないだろうからな」
 いつもの調子を取り戻し、マヤを小ばかにする。
 その挑発にマヤは次第に怒りを覚えて反撃する。
 「ええそうよ。必要ないんだから持つ必要もないでしょ。
 言っておきますけど、私は絶対行きませんからね」
 「来るよ」
 「行きません」
 彼の顔が真顔になる。
 マヤがはっとするほど真剣な眼差しだ。
 「別の相手を選ぶということは、
  どれだけ請うても得られぬ魂を死ぬまでひたすら求め続けるということだ。
  いっそ気が狂ったほうがましだと思えるほどの苦しみを味わうに違いない。
  俺には耐えられそうにない。
  そんな苦しみに、君は耐えられるのか?」
 台詞は鋭い矢となり、マヤの心に深々と突き刺さる。

 真澄の片手が伸びてきて、僅かに震えていたマヤの手を強く握る。
 「きっと、後悔しますよ」
 「今この瞬間に地球が滅亡したら、後悔するかもしれないな」
 「どういう意味ですか?」
 ニヤリと意地の悪い笑みを覗かせた真澄を、その意図を推し量れずマヤは首を傾げる。
 「君をまだ、抱いていない」
 瞬時に、マヤは頭の先から喉もとまで真っ赤に紅潮する
 それを真澄は噴出して大笑いする。
 からかわれて怒鳴り返そうと息を吸い込む間に、またも意味不明な言葉が飛んでくる。
 「俺が運転中で良かったな」
 「なにが?」
 怒りが納まるわけもなく、喧嘩腰になる。
 意に介さず真澄は楽しくて仕方がないとでも言うような顔をしている。
 「空港へ着いたら、君を抱き締める。
 それからキスをして、もう二度と離さないと君に誓う」
 艶やかな漆黒の髪がさらさらと流れ落ちる。
 火照ったままの顔から熱が引くこともなく、俯けた顔をあげられそうにない。
 握り締める温かい手を振りほどくことは、マヤにはできなかった。
 
 空港へ着くと、マヤは青い空と流れる雲を仰いだ。
 明日の空がどんな色をするのか、想像もできない。
 荷物は、車の後部座席にちょこんと乗せられたハンドバック唯一つ。
 それ以外は何も持ってきていない。
 身一つで、真澄についていく。
 二人を乗せた飛行機が空高く飛び立つ。





 【END】








お待たせいたしました。最終話です。
かなり短く作ったバージョンもあったのですけど、一月もお待たせしてそれはないだろうと考え直しました。
無駄に二話ぐらいの長さがあったものを、修正しUPすることにしました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

今回の更新内容を何にするべきか悩みました。
沢山頂いてるコメントにまずはお返事をするべきか、はたまた企画サイトで頂いたコメントに
お返事を入れるのが優先か、それとも連載か。
そこで拙宅に訪問して下さる方の立場になってみて、やはり連載を優先すべきと思い至りました。
何せ、残すところこの最終話のみでしたから。

 
今日は少々お昼寝をしすぎてしまい、夜中に目を覚ましてPCに向かっています。
熟睡してるダンナに見つかったら睨まれそうなので、こっそりやってます。
そろそろやめないと、肘鉄する相手がいないことに気づいて目を覚ますかも。
わざとじゃないんだけど、寝相が悪いんですよ(笑)。
 

次回はコメントを頂いた順にお返事をさせてもらいます。
心機一転のため、テンプレートを替えるつもりです。
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お名前 様へ

いつもご訪問くださり誠にありがとうございます。
この度は拍手ページにメッセージをくださり感激いたしました。
ブログを再開することができて、私も嬉k思っております。
待っていてくださり、本当にありがとうございます。
是非また拙宅へお気軽にお越しくださいませ。
心よりお待ち申し上げております。

〇〇〇o様 へ

3月14日にメッセージをくださいました〇〇〇o様

お返事が遅くなり大変申し訳ございませんでした。
いつもご訪問くださり、またコメントをくださり本当にありがとうございます。
すっかりご心配をおかけして申し訳ありません。
もしかすると、またしばらく休んでしまったのでご心配をかけてしまったかもしれませんね。
すみません。
20代前半なら多少の無理は利いたかもしれないけど、もうこの年ではだめですね(涙)。
睡眠不足はかなりきついです。
〇〇〇o様も、どうかどうかお体を大切になさってくださいませ。

最終話気に入って頂けて良かったです。
あの真澄さんの台詞は、バラ色の妄想を膨らませて書きました。
私自身も気に入ってます。
これだから創作小説はやめられませんね(笑)。



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