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Wikipedia (7)

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 鷹宮紫織は上品にスーツを着こなし、美しく化粧が施された顔は不機嫌を露にしていた。
 「ここが真澄様が所有されているマンションだと知り、伺いましたの。
  まさかあなたがいるなんて思いもしませんでしたわ……」
 不機嫌は明らかな怒りへと変貌し、突き刺すような鋭い視線がマヤを射抜く。
 視線の先が自分の胸元で止まっていることに気づき、マヤは見下ろしてはっとした。
 ブラウスのボタンが外れていた。
 しかも、上から二つのボタンだ。
 はだけた胸元から、下着の端が覗いている。
 マヤは慌ててボタンを留めた。
 紫織がつかつかと近づいてくる。
 
 頬で乾いた音が鳴った。
 マヤは驚き、殴られた左頬に手を当てた。
 「あなたという人はなんて汚らわしい。
  わたくしと真澄様はもうすぐ結婚するのですよ。
  そのわたくしの婚約者になんということをなさるの。
  あなただけは許せません。恥をお知りなさい」
 感情のままに紫織は怒鳴りつけ、息を切らした。
 脆弱な体質で、常に穏やかなお嬢様の激しい怒りにマヤは圧倒された。
 いつもの彼女なら、青ざめて震えて逃げ出したかもしれない。
 黙って罵倒を聞いていたマヤは、そんな紫織を眺めてクスクスと笑い出した。
 マヤの笑いは紫織の感に的確に触る。
 「何がそんなにおかしいんですの?」
 ヒステリックに甲高い声を上げる紫織に、マヤは明るい声で言う。
 「誤解です、紫織さん。私と速水さんがそんな関係なわけないじゃないですか?」
 紫織は意表をつかれた。それでも怯むまいと、問い質す。
 「では、なぜこんなところにあなたがいらっしゃるの?」
 「それは……」
 言葉を継ぎながらマヤは必死で言い訳を探す。
 視界の端に真澄がエントランスの奥のエレベータから出てくるのが映った。
 
 マヤは紫織にニッコリと微笑む。
 「紅天女の役を掴むためです。
  速水さんの部屋はここの最上階で、外の眺めがとても良いんです。
  女神として地上を見下ろす演技の稽古のために、速水さんが提供してくださったんです。
  おかげで役を掴むことができたんですよ」
 声を弾ませ、マヤは嬉しげに言う。
 言い終わる頃に、背後にあるマンションの自動扉が開いた。
 刹那、引き込むような強い風がエントランスの奥へと吹き込み、マヤの体は突風に揺らいだ。
 倒れそうになる体を、大きな両手が支えた。
 危ういところを助けられホッと安堵したのも束の間、自分を助けた相手を振り返りギョッとする。

 見上げた真澄は穏やかな笑顔を婚約者に向けていた。
「こんにちは、紫織さん。
 こんなところへおいでになり、どうかなさいましたか」
 婚約者の笑顔に誤魔化されまいと、紫織は真顔で詰め寄る。
 「失礼を承知で、あなたの素行調査をさせていただきました。
  一体ここで、北島マヤさんと何をしてらっしゃったのか……」
 そこまで言ったとき、マヤが声を上げた。
 「紫織さん。まだ疑うんですか?」
 押さえがたい怒りに紫織が振り返る。
 お嬢様が口を開くよりも先に真澄がマヤを嗜める。
 「マヤ、やめなさい」
 
 マヤは拳を作り食い下がる。
 「いいえ、黙っていられないわ。
  私はただ必死で紅天女を掴もうとしているだけなのに、
  頼によって速水さんなんかと変な誤解をされているんですよ。
  冗談じゃないわこんなおじさん」
 怒りながら、けれど真澄が口裏を合わせてくれるように、心の内で願っていた。
 最後の一言に真澄は敏感に反応する。
 そんなマヤを不機嫌に見下ろし、挑発を受けた。
 「ああ、そうだ悪かったな。
  上演権のためとはいえ、君みたいな子供と仲を疑われたんじゃいい迷惑だ」
 「子供じゃありません。
  とっくに成人して、お酒だってのめるんですよ。
  本当に失礼な人ですね。速水さんみたいな意地悪仕事虫と結婚してくれる人なんて、絶対紫織さんぐらいだわ。
  嫌われないようにもっと努力するべきですよ」
 「忠告感謝するよ。
  それだけ言いたいことを言ったら十分だろ。
  ちびちゃんはさっさと帰りたまえ」
 マヤの胸に忘れ物のバッグを押し付けると、真澄は穏やかに紫織に笑いかける。
 「紫織さん。
  これから食事にでようと思っていたのですが、宜しければご一緒にどうですか」
 眉根を寄せて表情を硬くしていた紫織の顔が、ぱっと明るくなる。
 「真澄様」
 真澄は鷹宮家の車を帰し、喜ぶ紫織を連れ立って、マンションの駐車場に向かった。
 立ち尽くしていたマヤは、完全に無視されていた。




 【NEXT】







区切りが良かったので掲載に踏み切ったのですが、今回は少し短めになってしまいました。
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comment

楽しませてもらってます

やっぱり、速水さん紫織さんに気をつかうんですね。
まあ、わざと考えがあってのことなんでしょうがね。
続きも楽しみにしてますよ~!!

ありがとう

あれこれ展開を考えたんですが、収まりがいいかと思ってこうなりました。
鷹宮紫織、さすがは美内先生が作られたキャラ。
恐るべき存在です。

ございます

すみません。
焦って送信したら語尾が欠けてました。
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