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Last Massage (4)

ガラかめ二次『Last Massage』第4話更新。
こちらは随分前に全3話で完結させていた作品なのですが、初の二次小説に挑戦したということもあり、なんとも中途半端な感じで終わっておりました。
近頃無性にまた書きたくなったのですが、いかんせん書けそうなネタが思い浮かばず、ふとこちらの作品を思い出しまして続きを書いてみることにしました。
頂いた読者様の拍手のお礼も兼ねまして。
のんびりまったり展開で何話か連載しますので、宜しければどうぞ。
ちなみに、1~3話も読み返して2015/11/10 改稿しました。といっても物語の内容は一切変えておりません。体裁と文章を多少修正した程度です。





Last Massage (4)


「ごめんなさい、桜小路君」

 何度も真剣に考えた末、マヤは桜小路にイルカのペンダントを返した。

「マヤちゃん、どうして」

 マヤは自嘲気味に笑う。

「今は、お芝居のことだけを考えていたいの。曖昧な気持ちで桜小路君にまで迷惑をかけられない」

 紫のバラの人と決別したマヤは、ひたすら稽古に打ち込んできた。
 マスコミ各社が、ライバルの姫川亜弓を大々的に宣伝し、実力の差をまざまざと見せ付けられても、マヤは必死で挫けそうになる自分を叱咤して、食らいついた。
 その後も、壁にぶつかる度に、何度も何度も挫けそうになった。
 挫けそうになるたびに、マヤが握り締めていたのは、紫のバラを押し花にしたしおりだった。
 忘れることなどできなかったのだ。
 たった一人の家族である母を失ってから、天涯孤独の身の上になったマヤを支えて、ここまで導いてきたのは、紫のバラの人であり、速水真澄なのだ。
 分かっていたことだ。
 分かっていても、それでも心は捨てきれずに彼を、彼だけを求めてしまう。
 いつか忘れて、桜小路君を見られるようになるかも知れないと、思ったこともある。
 けれど、そんな日は来ないと気づいた。
 辛くなると、無意識の内に、しおりのバラの花びらに触れていた。
 服の下の胸元には、イルカのペンダントがあったのに。
 桜小路には他にも女友達がいるのだから、そんなマヤの為に、いつまでも振り回すのは気の毒に思えた。
 試演まであと一週間、押し迫り、気持ちをいっそう引き締める為にも、返すことにした。

 桜小路はフッと笑って、イルカのペンダントを受け取った。

「君なら、そう言うんじゃないかと思っていたよ。でも忘れないで、僕が君を見ていることを。舞台の上で君は阿古夜で、一真は僕だ。だから、僕を見て、阿古夜」

 真摯な瞳に、マヤも見つめ返す。
 
 一真は速水さんじゃない。
 私の魂の片割れは……。

「マーヤちゃん」

 廊下の先から、共演者に呼ばれて振り返ると、その向こうに紫の花束が見えた。

 まさか……。

「お届け物ですって」

 共演者が背後の宅配業者を振り返る。
 そこには、長身で、前髪を顎まで伸ばした秀麗な男が、紫のバラの花束を抱えて待っていた。
 業者姿の聖唐人は、マヤと目が合うと会釈した。

「どうして」 


 届けられたのは、それは紅梅の見事な打掛けだった。
 
「マヤちゃん、すごーい、きれいっ」
「おお、こいつはいい、羽織ればさぞ舞台栄えするだろう」

 他の共演者や黒沼までがやって来て、なんだなんだと、マヤへの贈り物を覗き込む。
 添えられていたメッセージには、こう書かれていた。

 北島マヤ様
  
 試演まで、あと一週間になりましたね。
 あなたの紅天女をこの目で見る日がもうすぐくるのかと思うと、楽しみでなりません。
 この試演が、これまでたった一人、どれほどの困難にも負けずに立ち向かってきたあなたの集大成となることでしょう。
 あなたの成功を誰よりも信じています。

 あなたのファンより


 整然と綴られた手書きの文字は、いつも紫のバラに添えられた手紙と同じだった。

「どうして……」

 これで、最後って言ったのに。
 もう、紫のバラを贈らないでって言ったのに。
 
 振り返ると、聖の姿はどこにもなかった。

「さっきまでここにいた人は?」
「ああ、その人ならもう帰ったわよ、……マヤちゃん?」

 訊ねた共演者が言い終る前に、マヤは駆け出していた。
 スタジオから出て外に出ると、トラックに乗り込んだ業者姿の聖が去っていくところだった。
 声もかけられず、マヤは呆然と走り去るトラックを見送るばかりだった。

「どうして……」

 速水さん。
 聖さん、速水さんに手紙、渡してくれなかったの?
 そうだとしても、どうして、あんな綺麗で高そうな打掛けを私にくれたりするの?
 ねえ、速水さん……教えて。
 あなたの心が私には見えない。

 マヤの頬に涙が伝い、落ちていく。
 



 試演の舞台で、客席を埋め尽くす多くの人々の前、マヤは紫のバラの人から贈られた内掛けを羽織り、全身全霊をかけて、紅天女を演じきった。
 もう何も思い残すことはない。
 たとえ、それで姫川亜弓に負けたとしても、悔いはない。
 着替えの為に楽屋へ入ったマヤは、脱いだ打掛を胸に抱きしめて静かに泣いた。
 彼は、舞台が良く見える中央舞台寄りの席にいた。
 舞台に立ったマヤにはすぐに分かった。
 紫のバラの人が、速水さんが見てくれている。
 そう思うだけで、涙が出そうなほど嬉しく、阿古夜になりきって、ありったけの想いをぶつけた。
 今朝、何気にマヤは見てしまった。
 
 『大都芸能速水真澄、破局』
 
 紙面に踊る大きな文字。
 鷹宮紫織との婚約が破棄されたことが書かれていた。
 理由までは分からなかった。
 結婚式場で見た紫織を庇う真澄を思い出すと、気の毒になったが、どうしても期待してしまう。
 11歳も年下で、演技以外は何の取り得もない自分だというのに。
 たとえ婚約を解消したとしても、相手にしてもらえるはずがないのに。
 分かっているのに。

 速水さん、あなたに会いたい。
 会って、ちゃんとお礼を言いたい。



 一週間後、マヤはとあるビルの前に来ていた。
 調度、一階のロビーに下りてきていたサングラスの女性が、マヤを見かけて出てくる。

「マヤちゃん、来てくれたのね、嬉しいわ」

「水城さん」

「美味しいケーキがあるのよ。ミルクティーを入れるから、いらっしゃい」

「はい」

 マヤは力なく笑ってついていく。
 速水さんのいる会社だと思うと、緊張して動悸がする。
 以前は怒鳴り込んだこともあったが、今はもう考えられない。
 マヤを大都芸能本社に招いたのは企画部長だ。
 社長は休む間もないほど忙しいらしい。
 何をしてしまったのか、真澄は鷹宮紫織に突然婚約を破棄され、それによって生じた鷹宮グループと大都の契約も白紙になった。
 大都芸能は多大な損害を受け、そのため真澄の会社での立場は非常に危ういようだ。
 真澄とマヤは、試演の結果発表の会場で、離れた場所にいた彼と目が合ったが、会話をすることもなく、もう三月ほどまともに会っていなかった。 

 応接室に通されたマヤは、革張りのソファーを勧められ恐縮して浅く腰掛けた。
 そこへ水城が、ケーキとミルクティーを運んでくる。

「契約の件、考えてくれた?」

「はい、こちらでお任せしようと思います」

「そう、ありがとう。またマヤちゃんと仕事ができるなんて嬉しいわ。社長もすっごく喜ぶと思うわ」

「それなら良いんですが、以前契約したときは、随分と速水さんに迷惑をかけてしまったから」

 水城が感慨深げに微笑む。

「そんなこともあったわね。でも、もう昔のことだわ。あなたは大人になって、女優なら誰でも一度は憧れる紅天女を演じるまでになったわ。日本を代表する女優になったのよ、もっと自信を持ちなさい」 

「はい」

 試演で姫川亜弓と競った結果、マヤは阿古夜役に選ばれ、正式に幻の名作とまで謳われた『紅天女』の上演権を獲得した。
 何も持っていなかったマヤが、それを持って、真澄のいる大都芸能に来ている。
 こんな日が来るなんて思っていなかった。
 もう二度と、大都と契約を交わすことなどないと思っていたのに。
 速水さんの役に立ちたい、速水さんになら、上演権を奪われても構わないと思っている。
 恩師の月影が命をかけて守り抜き、マヤが血の滲むような努力でやっと掴んだ上演権だ。
 だが、マヤが上演権を得られるまでになれたのは、紫のバラの人である、真澄がいたからだ。
 一人では決してたどり着くことのできなかった頂。
 試演の舞台にマヤは一人で立った。
 だが、真澄の想いが篭もった打掛けを羽織ったマヤは、決して一人ではなかった。

 コンコンッ。

 ノックの後に、扉が開く。

 入ってきたスーツ姿の男に、マヤは椅子から立ち、挨拶をしようとして息を呑む。

「やあ、ちびちゃん、ようこそ大都芸能へ」

「ま、真澄様、今日は大阪へ出張ではなかったのですか?」

「行ってきたさ。早々に切り上げて、今戻ったところだ。寝てないんだ、目が覚めそうな熱いコーヒーを頼むよ」 



【NEXT】

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comment

続きお待ちしています。

初めまして。

つい最近こちらのページを見つけて、一気に読ませて貰いました。
とても面白かったです。

また、お体の具合が戻ったら続きを執筆して頂きたい、、、と切に願っています。

回復をお祈りしております。
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