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Wikipedia (5)

 Wikipedia (5)

 ※ネタばれあります。ご注意ください。




 マヤは真澄と過ごした一時の思いを、阿古夜の恋の演技に生かし、猛特訓に励んでいた。
 そんなマヤの知らないところで、鷹宮紫織が青木麗と水無月さやかに接触し、紫の薔薇の人のことを聞いていた。
 真澄が紫の薔薇の人だと確信を得た紫織は、伊豆の真澄の別荘へと向かった。
 そこで、マヤの一ツ星学園の卒業証書とアルバムを見つけてしまう。
 紫織は激しく嫉妬の炎を燃やし、マヤの写真を引き裂いた。
 


 真澄のマンションで会って以来、十日が過ぎていた。
 稽古の休憩の合間に、マヤは真澄から渡された携帯電話を開いた。
 三日前に届いたメールにはこう書かれている。
 『いかがお過ごしですか?
  その後、稽古は順調に進んでいるのでしょうか?
  宜しければ、次の休日に、拙宅においでください。
  あなたの好きな、紅茶とケーキを用意してお待ちしております。   
                              あなたのファンより』
 マヤはそのメールをもう何度も読み返している。
 そのたびに、胸にぎゅっと抱き締めた。
 返信はしていない。もう真澄のマンションには行かないと決めているからだ。
 それでもメールを見るたびに意思が揺らぐ。

 

 鷹宮紫織が、マヤを訪ねてきたのは稽古の合間のことだった。
 キッドスタジオから車で走ること数分の場所にあるカフェで、紫織と向き合った。
 急に呼びたてたことを詫びながら、紫織は左薬指に嵌めている指輪を見せ付けるようにもう片手で触れた。
 マヤが指輪のサファイアに見惚れていることに気づくと、
 その宝石が自分の誕生石で婚約指輪として真澄から贈られたことを教えた。
 サイズが合っていないのだと困ったように言った。
 指輪の話の後で、紫織は紅天女の上演権のことへと話題を換えた。
 獲得するのが姫川亜由美なら問題はないのだと、しかしあなたなら大都での上演は見込めないと話した。
 紫織は顔を青ざめて切々と訴える。
 「マヤさん、あなたが速水をとても憎んでいることは知っていますわ。
  無理もありませんわ。速水のせいでお母様があんな目に……。わたくしだったら一生許せない。
 「でもマヤさん。どうか速水を許してやっていただきたいの。
  もう二度とあなたの邪魔はさせませんわ。わたくしが約束します」
 「あなたには信じられないでしょうけれど、速水はああ見えて本当はとても心のあたたかな優しい人なんですのよ。  でなければ、わたくし婚約など……」
 「わかっています」
 言い終わらないうちに、マヤがはっきりと答えた。
 「え?」
 紫織が耳を疑い、聞き返すと、マヤが思いつめた面持ちでもう一度繰り返した。
 「わかっています、私」
 真澄を激しく憎んでいると信じていただけに、マヤの台詞に紫織は衝撃を受けた。
 二人の会話が途切れたところで、付き人兼運転手の山岡が、紫織に時間を告げた。
 気を利かせて立ち上がったマヤの腕を、すかさず紫織は掴んだ。
 その拍子に、マヤの腕からハンドバッグが床に落ち、中身が散らばった。
 慌てて拾うのを手伝うふりをする紫織は、それを抜き取り拾ったハンカチと一緒にマヤのバッグへと戻した。
 何も気づいていないマヤに見送られ、紫織は車に乗ってその場を後にした。
 

 
 自分のバッグに指輪が入っていることに気づいたマヤは、すぐに紫織に返すために連絡をとった。
 指定された場所を訪ねると、紫織がオートクチュールの優美なウエディングドレスを着ていた。
 仮縫いの最中である紫織に指輪を返そうとしたが、話をそらされてしまう。
 喉が渇いたからと、紫織にブルーベリーのジュースを渡した。
 渡す際に、紫織の手からグラスが滑り落ち、ジュースがドレスに無残なシミをつけた。
 紫織の悲鳴を聞きつけて、真澄が駆けつけてくる。
 同じく騒ぎを聞きつけてやってきた係員が、椅子に置いていたマヤのバッグを掴んで追い出そうと渡してくる。
 呆然とするマヤは手渡されたバッグを床に落としてしまう。
 落ちた衝撃で鞄の中から指輪が転がり出てくる。光を浴びて青い宝石が輝いた。
 冷たい視線がマヤを突き刺す。
 言い訳をしたが、真澄は信じてはくれない。挙句、握り拳を作って怒りを露にする真澄に怒鳴られる。
 「紫織さんをこんな目に合わせて一体何が目的だ?」
 マヤはそんな疑いを真澄に持たれたことに驚き、怯んだ。
 真澄は完全にマヤを疑ったまま、更に言う。
 「君がこんな卑怯なことをする娘だとは思わなかった。信じられない。
  俺の目も曇ったものだ。君が俺を憎んでいるのは知っている。
  それだけのことを俺はしたからな。だったら俺を憎め。俺のフィアンセは関係ないだろ」
 愕然として、マヤは打ちのめされた。

 

 純白のドレスが台無しになり、ショックを受ける紫織を、真澄は鷹宮邸まで送り届けた。
 その後は社に戻り、やらねばならない仕事がいくつか残っていた。
 だがとても戻る気になれない。
 重要な仕事が残っていないことを確認したうえで、秘書に無理を言って直帰する胸を伝えた。
 向かった先は、マヤと影の部下以外知らせていないプライベートマンションだ。
 玄関に入れば甘い薔薇の香りがする。
 真澄は花瓶に生けられた薔薇を一輪抜き取った。
 明かりもつけず、暗いリビングに入ると、身を投げ出すようにソファーに座った。
 手に持った薔薇を見つめ、真澄は膝に肘を乗せうなだれた。
 マヤに対して、いつになく感情的になってしまったことを悔いた。
 彼女が指輪を盗んだり、紫織に嫌がらせをするなど信じられなかった。
 マヤはいつだって真澄に直接怒りをぶつけていた。
 それを今になって、婚約者であるという理由で紫織に酷いことをするとは考えにくい。
 わかりきっていることだった。なのに、言い過ぎた。
 丁寧に棘が取り除かれた紫の花弁を見つめ、真澄は長い溜息をついた。
 不安だったのだ。
 紫の薔薇の人として、マヤに渡した携帯電話にメールを送ったのだが、いつになっても返信をもらえなかった。
 そのことが、真澄を不安にさせていた。
 嫌っているはずの自分を、役のために受け入れるマヤが、
 この関係を終わりにしようとしているのではないかと思うと、いてもたってもいられなくなる。
 小さな紅い唇から、秘めた情熱が、深い愛が、自分だけに注がれる。これ以上の喜びを真澄は知らない。
 いつでも触れられる距離で、同じ時間を過ごせるのなら、例えマヤが紫の影を見ていようとも構わなかった。
 会いたい。
 そう思っていると、胸の携帯電話が震えた。真澄はすぐに内ポケットから、それを取り出して画面を開いた。
 マヤからのメールだった。
 『マヤです。
  速水さん、誤解なんです。
  私、紫織さんの指輪を盗んだりしてません。
  ドレスにジュースがかかったのもわざとじゃないんです
                            北島 マヤ』
 真澄は素早く指を動かして、マヤに返信した。



 翌日、マヤは選びに選んだ装いで、家を出た。
 電車に乗った束の間、マヤは携帯電話を開く。真澄からの返信メールを見つめた。
 『明日の午後二時、マンションまでお越しください。
  紅茶とケーキを用意して、あなたをお待ちしています。
                          あなたのファンより』
 マヤの鼓動が高鳴る。真澄と会う瞬間をまるで急かすようだった。
 電車を降りると、マヤは走っていた。
 時間は充分にあった。にもかかわらず、ゆっくり歩くことができなかった。
 30分以上も早く目的地であるマンションについてしまい、マヤは待つべきか迷った。
 だが、はやる気持ちがインターフォンの部屋番号を押させる。
 鍵はすぐに開けられた。マヤは深呼吸をすると、エントランスに入った。
 エレベーターで最上階に上がると、通路の先のたった一つの扉が開かれていた。
 普段着の真澄が待っていた。早く誤解を解きたくて、マヤは必死で言い募る。
 「速水さん、私、指輪なんて盗んでません。信じてください」
 「分かっている。部屋で話そう。おいで」
 真顔で、マヤを手招きする。
 真澄を追って、マヤはリビングへと入った。広い部屋に、真澄の姿はなかった。
 見回そうとして、刹那、視界が塞がれる。ハンカチが目にあてられ、目隠しをされた。
 マヤは、訳がわからず抵抗する。
 「待って、速水さん。ちゃんと話を聞いてください。私わざとじゃ……」
 ふわりと、煙草の匂いとコロンの香りが鼻腔を掠め、真澄に背後から抱き締められる。
 驚きのあまり、マヤは絶句した。
 左手首をつかまれ、掌に文字がなぞられる。
 『会いたかった。早く、あなたとこうして、会いたくて仕方がなかった』 
 熱烈な言葉は一瞬にして、紫織とのトラブルを、マヤの脳内から消し飛ばす。
 マヤは言葉を失い立ち尽くす。胸の鼓動だけが、うるさいほどに激しく脈打っている。
 頬を撫でられたかと思うと、柔らかな唇がそこに押し当てられる。
 唇が離れると、マヤは手探りで彼に向き合い、恐る恐る彼の胸に抱きついた。
 マヤの背に逞しい腕が回され抱き締め返される。
 マヤは思わず彼の背に回した腕に力を込めた。
 しばらくの抱擁の後で、マヤはそっと顔を離し、見えない目で彼を見上げる。
 手を伸ばし、指先は彼の頤に触れた。彼の輪郭をなぞり、精悍な頬に触れる。
 思いが溢れ、口をついて出てくるのは……。
 「あの日、谷で初めておまえを見たとき阿古夜にはすぐにわかったのじゃ。
  おまえがおばばの言うもう一人の魂の片割れだと……」
 そっと真澄の腕から離れた。押さえきれない無上の喜びを噛締め、阿古夜の台詞に溢れる思いを載せて演じる。
 「……名前や過去がなんになろう。巡り合い生きてここにいる。
  それだけで良いではありませぬか。捨ててくだされ。名前も過去も、阿古夜だけのものになってくだされ」
 囁くように切なく言い募り、マヤは手を伸ばす。
 「おまえさまは……」
 一真の台詞を飛ばして続けようとそこまで言いかけたが、手を捕まれ強い力に引き寄せられた。
 顔に服の生地が触れたかと思うと、強く抱き締められた。
 もはや限界だった。マヤはハンカチの下で、瞼を硬く閉じた。
 「お願いです。たった一度で構いません。私を抱いてください」
 自分を抱く逞しい腕に、緊張が走るのがマヤにも伝わってきた。
 



 【NEXT】






あけましておめでとうございます。本年も何卒宜しくお願い致します。
『Wikipedia(5)』ようやく投稿できました。遅くなり申し訳ありません。
続きは、一週間以内を目標に書きたいと思います。だんだん書くのが遅くなっておりますが、体調を継続させつつ頑張りたいと思いますので、どうか見捨てないでやってくださいませ。
私の周囲では、今すごく風邪がはやっております。どうぞ、皆様もお体を大切になさってくださいませ。
寝るときに首にタオルを巻いて寝ると、とっても暖かいですよ。
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あけましておめでとうございます。

新年のご挨拶ありがとうございます。
お返事が遅くなり申し訳ありません。なかなか時間がとれず、今日やっとPCに向かえました。
こちらこそ、本年も何卒宜しくお願い致します。
いつも読んでくださり本当にありがとうございます。そう言ってもらえると、自信を持って連載を続けていけます。頑張りますv-91
マッスル企画は、ミスティさんのサイトより知ったんですよv-238
そのことをすぐにお知らせしようと思ったのですが、参加したことを他言してはいけないのかと思ってたんですよ。
ミスティさんの4コマ楽しみ!
拍手コメントでのお礼のお絵かき大好きなんですよ。
私は以前書いてた『豆台風再来?』を、きちんと練り上げてから投稿させてもらおうかと思ってます。
バナーについてですが、以前からずっと作成方法を探し続け、fc2の書籍をめくり試行錯誤してたんですよ。とりあえず作れたと思い、テンプレートに貼り付けようとしたのですが、リンクに文字だけ追加できても、バナーとして画像を貼り付けられないのです。
で、ずっとどうしたものかと思っていたら、マッスル企画のペリさんが、拙宅をリンクしてくださってたんですよv-237
しかもバナーもちゃんと貼ってくださってて……飛び上がるほど驚いちゃいました。確かに私が作ったバナーなのですが、一体どうやってされたのか、なぞなんです。
私もミスティさんのようにバナーを表紙に貼ってみたいです。
非常に厚かましいのですが、伝授して頂けないでしょうか?
『ミスティ・トワイラル』様を拙宅のリンクにお招きしても宜しいでしょうか?


どうぞどうぞリンクしてやって下さい。
私も今リンクのページ(表紙から移そうと思って)を作ろうと思って四苦八苦しています。メンテナンス中です。
多分管理画面のプラグインカテゴリの3でフリースペースを作ってリンクコーナーを作ればいいんじゃないかな?
<ul>
<li style="text-align:left"><a href="http://kukumimi119.blog91.fc2.com/" target="_blank">ミスティ・トワイライト</a></li>
</ul><a href="http://kukumimi119.blog91.fc2.com/" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-34.fc2.com/k/u/k/kukumimi119/2009102200311012a.gif" alt="ミスティ・トワイライト" border="0" width="200" height="40" /></a>
あとこれを貼ってみて下さい。コピペして。
増やす時はこれを(コピペして)参考にしてください。
バナーはペりドットさんのところにあるんですね。
私もページができたらリンクさせて下さいね。

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