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Last Message (1)

 漫画『ガラスの仮面』の二次小説

【注】
 単行本46巻の続きからの設定。
 稽古を終えたマヤが、自分のハンドバッグに紫織の指輪が入っていることに気づき、マヤは指輪を返そうと紫織に会いに行く。
 そこで、ウエディングドレスを着た紫織の嫉妬渦巻く画策に嵌められ、マヤは真澄の怒りをかい……。

※2015/11/10 改稿しました。物語の内容は一切変えておりません。体裁と文章を多少修正した程度です。

 
  
 



 Last Message  (1)

 
 憎むならおれを憎め。
 おれのフィアンセは関係ないだろ。
 きみがこんな卑劣なことをする娘だとは……。

 紫織を背に庇い、真澄は憎しみに満ちた目でマヤを睨みつけていた。ヴェアミングパレスビルを後にしてから、マヤは真澄の言葉を何度も頭の中で反芻していた。
 フラフラとどこをどう歩いているのかも分からなかった。
 けたたましいブレーキ音がマヤの耳に届き、振り返ったときにはもう遅かった。彼女は宙を舞っていた。
 
「こんなときになにやってんだ。あいつは」
「マヤちゃんがどうしてこんなことに」

 黒沼龍三と桜小路優が騒々しく病室へやってきた。
 マヤは交通事故にあったのだ。赤信号にもかかわらず横断歩道に出て車に撥ねられた。

「あ、先生、桜小路君」

 訪れた二人にマヤが気づいて手を振った。
 病室の大きな窓から差し込む明るい陽の光が室内を照らし、緩やかな風が白いカーテンを揺らしていた。
 腕や額に白い包帯を巻いてはいるものの、呆気にとられるほど彼女は明るかった。
 黒沼は場所を考え説教を先延ばしにし、桜小路に「早く稽古に戻れよ」と釘を刺すと早々に帰った。
 桜小路は、マヤにおどけたように肩をすくめて見せた。

「劇団つきかげの青木さんから、連絡をもらったときはびっくりしたよ」

「心配かけてごめんなさい。」

「それより、軽症で良かったよ」

「ほんとね、車にはねられて擦り傷と打撲だけですんだんだもの。頭を打っているからあと一日だけ検査入院しないといけないけど、これなら明後日から一緒に稽古もできるわ」

 「だめだよ。無理しちゃ」

 マヤは笑った。引きつりそうな顔に精一杯の笑顔を作る。

「稽古したいの」
 
 
 マヤが事故を起こして病院に運ばれたことは、その日のうちに、真澄の耳にも入ってきた。
 明後日には退院と聞き、蒼白になった真澄はほっと胸を撫で下ろした。
 どんな理由をつけてでも、今すぐにマヤの見舞いに行きたかった。だが真澄は衝動を堪えて、執務机に山積している仕事に戻った。
 先日、紫織の指輪を盗んだかもしれないマヤを怒鳴りつけた後では、顔を合わせづらかった。
 真澄の脳裏には、どうしても忘れ去ることのできないことがある。演劇協会理事長宅である山岸の邸宅で静養している月影千草に会いに行ったときのことだ。
 偶然そこで思わぬ再会をしたマヤに、一真ではないと拒絶されたことが、鋭い棘となって、今もなお真澄の胸を抉り続けている。
仕事をしていたはずが、いつの間にかマヤのことを思い出して、真澄はため息をつく。 
 婚約者を傷つけるほど憎まれている。
 分かっていても、紫の薔薇に愛しげに唇を寄せるマヤの姿が鮮明に蘇る。忘れることなど、真澄には到底できそうにはない。
 胸ポケットから携帯電話を取り出すと、影の部下に連絡を入れた。
 
 
 翌日、青木麗の迎えで、マヤは退院しようとしていた。
 そこへ花屋に扮装した聖が、紫の薔薇の花束を手にやってきた。
 マヤは紫の薔薇を目にした瞬間、表情を硬くした。

「北島マヤ様に、お届け物です」

 何気ない風を装って手渡されたマヤは、花が束ねられた茎の部分をしっかり握ると、ぎこちなく頭を下げた。

「ありがとうございます」

 その様子に、麗が怪訝な顔をしながらも、明るくマヤに言う。

「よかったじゃないか、マヤ」
「うん。ごめん、麗。持ってくれる?腕が痛くて」

 紫の薔薇の花束を、もらってすぐマヤが他の人間に預けた。左腕を怪我しているとはいえ、右腕はハンドバッグを持ち、薔薇を持とうとはしない。
 今日もまた、花束を抱きしめてマヤが喜ぶものと信じていた聖は、無表情の下で不審に思った。
 だが、顔を公にできない彼は、彼女の心の変化を確かめるすべもなく、一礼してその場を去るしかなかった。
 
 
「マヤちゃん、事故に会ったって聞いたときは驚いたけど、嘘みたいに今日も元気がいいわね」

 キッドスタジオの稽古場で、共演者にそういわれるほどマヤは明るく振舞った。
 桜小路と息のあった演技は、黒沼を納得させる場面が増えてきた。だが、一真の魂を請う場面になると、急にぎこちなくなってしまう。
 やれやれと、黒沼は頭をかき、次に引き裂かれた一真と阿古夜を演じさせた。
 床にはいつくばったマヤは一瞬で顔を青ざめさせた。真澄に投げつけられた憎しみの言葉がよぎる。
 憎むなら俺を憎め。

 会えない。もう会えない。
手が震え台詞が口をついて出る。

 「おまえさま……会いたい……」

 思い出すのは真澄の厳しさ、からかい、そして笑顔。嫌われてしまった現実。
 マヤは、今の感情そのものを、隠すことなくさらけ出した。

「おまえさまと出会う前、私はどうやって生きていたのか?」
「もう思い出せぬ」
「おまえさま」

 絶望的な悲しみに打ちひしがれて、涙が頬を伝う。
 スタジオ内が静まり返っていた。他の役者たちが固唾を呑んで、見守っている。

「それまでっ」

 黒沼の合図で桜小路が立ち上がった。
 だがマヤは、呆然として涙を流し続けていた。

「これが、阿古夜の苦しみ」

 マヤの呟きに、黒沼が頷く。

「そうだ。いい表情だった。忘れるなよ」

 マヤは袖で涙を拭うと、頷いた。



【NEXT】

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comment

節 様へ

拍手ページにコメントをくださりありがとうございます。
そういえば、テレビドラマにも、同じようなシーンがありましたね。
私もドラマ見ましたよ。もう何年前のことなのか思い出せないです(笑)
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